ベンチャー経営者と語り合う「X-エックス-」を2015年6月にローンチしてからもうすぐ7ヶ月。
考え抜いた末に、年明けの1月末から課金を開始することにしました。
ここで、この度の課金開始という意思決定に至るまでの経緯をまとめておきたいと思います。
ちなみに、X-エックス-の課金プランは恐らく最もアグレッシブな課金モデルの一つだと思うので、結果が出る前のこのタイミングで考えを綴っておくというのは価値あることだと思い、筆を執りました。
まずはローンチ前の事業計画における課金プランの考え方を整理することにします。
月額課金制。
新規登録ユーザーは2ヶ月の無料体験期間の後に「有料」でサービスを続けるか止めるかを選択する。
【ローンチ前モデル】 ※税抜
スタンダード プレミアム
プロフェッショナル 660円 6、660円
ベンチャー経営者 ー 10万円
サービスとは、”ユーザーが得られる価値”の見合いとして”対価”を頂くべきだと僕たちは考えています。
そして、本質的には無料のサービスは要らないとも思っています。
だからこそ、「広告」ではなく、「サービス利用料」に主眼を置いています。
(そもそも招待制でマスを追うサービスではないので「広告」モデルは成り立たないのですが)
X-エックス-でユーザーが得られる本質は「人との出会い」です。
それも、人生を変えるほどのインパクトがある出会いです。
《プロフェッショナル向けの価格の考え方》
プロフェッショナルの方は、人生を賭して今を生きるベンチャー経営者に出会うことができます。
スタンダード(最低価格)の月660円には、「月に一度新書を買うのであれば、生きた人間から学ぶことができる」という意味を込めています。
660円という価格はサービス運営者としてはビジネス(お金)にはならないです。
招待制でやってるのでなおさらですが、100人でも66千円、500人でも330千円にしかなりません。
「価値に対する対価をきちんと頂く」という文脈で、少なくないが無視できるレベルのコストという意味付けをしたいと思っていました。
そこで、500円〜1,000円の間の薄い新書くらいの価格帯を考え、会社名にちなんで660円という設定にしました。
プレミアムプランの月6,660円が本来のサービス価格だと考えています。
スタンダードに付与している機能制限がこちらにはありません。
サロンサービスが月額5千円前後なので、それを意識した価格設定にしています。
《ベンチャー経営者向けの価格の考え方》
ベンチャー経営者は、会社の運命を左右するビジネスパーソンに出会うことができます。
経営者のモチベーションの7割方は人材採用です。
エージェントを利用した人材採用の観点では転職者の年収30%が相場です。
年収500万円の人を採用したら、アップフロントで150万円のフィーが費用としてかかります。
月額10万円(年間120万円)は年間通して一人採用できたら十分ペイできる水準です。
プロフェッショナルユーザーは基本的に転職潜在層なので経営者のコミットが必要です。
然し、クオリティーの高いユーザーに何人でもアクセスができるのでコミットする価値は十分あります。
スケールすればするほど、タスクは増えますが、それは出来る仲間に任せるべきです。
極論、経営者の仕事の本質は”visionを語ること”、即ち「採用」と「資金調達」の二つだけです。
「生き方を語る」という前提が整備されているフィールドで、僕はどんな人でも深く共感できたら仕事=「生き方」を変えることは有り得ると思っています。
そこにチャレンジする価値は十二分にあります。
では残りの3割の価値はなんでしょうか?
X-エックス-は人と出会うことができるという場を提供しているだけなので、出会ったプロフェッショナルにライトパーソンを紹介してもらうことで「人財紹介」「営業」「業務提携」「資本業務提携」など、幅広い価値へのリードを得られることができます。
生き方を語り合うほどの濃い時間を過ごせば、共感したプロフェッショナルは喜んで協力してくれるでしょう。
月額10万円はサービスを理解して使いこなせる経営者には十分安い価格だと思っており、スタンダードプランは設けませんでした。
以上が、ローンチ前の課金モデルの考え方です。
有料でないと続けられないという点は非常にアグレッシブです。
課金を開始した瞬間にユーザーが全員退会する可能性もある。
サービス運営者としては(無料の)登録者数という鎧がないので大変怖いモデルです。
ただ、X-エックス-には見せかけの数は要らない。
お金を払ってでも使いたいという”本気の”ユーザーしかいないという世界を目指していました。
会う気が全くないというユーザーにたくさんいてもらっても、オファーを出した方に申し訳ない。
もし月額660円を払ってもらえないようならサービスを止めた方がいいという覚悟です。
では、実際に課金を開始することになったプランはどのようなものでしょうか?
【(実際の)課金モデル】 ※税抜
スタンダード プレミアム
プロフェッショナル 660円 6、660円
ベンチャー経営者 1万円 10万円
結果的には、ベンチャー経営者にスタンダードプランを付け加えました。
理由としては、経営者サイドに月額10万円 or notを選択して頂くクオリティーには”ユーザー数”と”システムレベル”からまだ改善の余地があるということです。
そこで、機能制限付きのスタンダードプラン月額1万円を導入しました。
最低価格として、経営者サイドに1万円 or notの選択だったら十分勝負できるという判断です。
結果的には、当初描いた課金モデルとほぼ同じ形になりました。
ただ、実はこの意思決定に至るには紆余曲折ありました。
「正式版に至るまでのつなぎ」という位置付けとして他に検討したプランがありました。
それは、次のようなものです。
◼︎ユーザーが価格を選択できる「クラウドファンディング型課金」
(理由)ユーザーが得られる価値の見合いを対価として頂くべき。ただし、特に現段階ではユーザーによって得られた価値の大小が違う。それならば、自分が得られた価値に対する対価を選択してもらえばよいのではないか?実際の課金モデルに「無料プラン」を加えた三択の選択肢を企図。
(問題点)無料でも続けられるユーザーがいるというのは、「お金を払っても使いたいという本気のユーザーだけを集める」という本質からはズレている。
◼︎オファー送信の都度課金する、「都度課金+成果報酬型モデル」
(理由)月額課金モデルでは対価が見えづらいのではないか?出会いの対価という観点であれば、出会いの都度課金すべきなのではないか?そして、転職/採用という成果が出たらその際にまとまった金額を対価として頂くという形。
(問題点)オファーの都度課金という形にすると、ユーザー交流を促進したいのにそれが重しとなってしまう。また、成果報酬に重点を置くと、X-エックス-の価値の一部にしか課金ができない。また、そこに重点を置くと転職を促すインセンティブが仕組み上働き、プラットフォーマーとしての公平性を失う可能性がある。
「プライシングはサービスの一部です。」
メンターとしてサポート頂いているキャピタリストの方に常に言われてきました。
このプライシングの形は僕たちの生き方と最もマッチすると思っています。
結果がどうなるかは分かりません。
でもビジネス判断は全てにおいて事前に分かっている正解は有りません。
ここで、少し来し方を振り返ってみたいと思います。
X-エックス-は2015年6月よりサービスインし、開始から半年強を経て魅力的なベンチャー経営者・プロフェッショナルの方々の温かく繋がりの強いコミュニティーに成長してきました。
特に、”ベンチャー経営者と[ガチ]真剣で[サシ]1対1で生き方を語り合う”、”食事会をキーにする”、”オンラインとリアルの両輪でユーザー交流を加速する”という3点では世界初のユニークな立ち位置を確立してきたと思っています。
最初はユーザー数0人の段階からスタートしたX-エックス-も今や120名を超えるユーザーの方々に使って頂いております。対面招待制のサービスとしては予想を超える速度でユーザーの裾野が拡がっております。それは一重に名もないサービスを信じて使って下さった皆様に支えられたお陰です。
X-エックス-はこれまで無料β版としてユーザー数の拡大とシステム改善を行ってきました。然し、真のサービスになるためにはユーザーの方々にきちんと価値をお届けし、その対価を頂くことで、持続可能な仕組みにすることが欠かせません。
その観点でサービスローンチ後の半年を振り返ると、ユーザーの裾野の拡大に伴い、複数の転職/採用や、ユーザー間でのいくつもの取引・トランザクションが生まれ、ユーザーの方々一人一人に価値を届けられるサービスになってきました。
そこで、2016年1月末以降を目処に課金を開始するという判断ができるようになりました。
ただ、ユーザー数やシステム面でまだまだ改善の余地が必要であるため、β版のまま課金を開始する所存です。
ここからは、一人一人のユーザーの方々と真剣勝負です。
皆さんにはフラットに判断してもらいたいと正直に思っています。
そして、お金を頂く以上の価値がX-エックス-には間違いなくあると思っています。
僕たちにとっては、どういう結果が出ても後悔しないと思える意思決定でした。
そして、正解は自らの意志で創っていくものだと思っています。
それでは、Good Luck!
P.S.
お金に纏わるちょっと嬉しかった話。
最近、大学の後輩と飲んだのですが、「会計は僕が出します。」と言ってくれました。
「いや、いいよ俺のサービス、原則割り勘だしw」と僕が言ったところ、こう返答がありました。
「1年弱前に飲んだ時に、川元さんが結婚祝いだと言ってご馳走になりました。少し遅くなりましたが、今日は僕からの起業祝いという形で出させて下さい。」
これはぐっと来ました。
ちょうど同じ日のランチ。
「今日はわざわざお越し頂いた(交通費もかかってると思う)ので、僕が出します。」と言ってくれた方がいました。
お金というのは、無機質ですが、そこに意味があると心に響きます。
特に、身を削ってやっている今の立場の僕にはずっしり響きました。
嬉しかったです。
僕もそういうお金の使い方をしていきたいと改めて思いました。